代表挨拶
2015年度より4年間にわたり、近代ヨーロッパにおける女性の移動とジェンダーとの関係をめぐる共同研究を行うことになりました。2011年度から4年間にわたって行われた科研費基盤研究(B)「近代ヨーロッパを中心とする空間的移動の実態と移動の論理に関する比較史研究」の続編にあたるものです。前回は、毎年二~三回の研究会を行うほか、欧米から研究者を招聘してのシンポジウムや日本西洋史学会大会での小シンポジウム開催など、積極的に活動を行いましたが、この共同研究でもほぼ同じようなペースで研究会、シンポジウムを開催する予定でおります。
近年のヨーロッパ諸国では介護労働に従事する外国人女性の急増を主たる要因として、「移民の女性化」と呼ばれる事態が進行しています。近年の現象が「女性化」と呼ばれるのは、歴史的には空間的移動を実践する人々の多数が男性によって占められていたという認識をベースにしています。確かに、19世紀後半から20世紀半ばまでの時期のヨーロッパ人の空間的移動に関する統計資料を見ると、「移民」における男性の数的優位は明らかです。しかしながら、相対的には女性の「移民」が男性に比べて少ないとしても、女性「移民」の絶対数は膨大なレベルに達していますし、呼び寄せの形で移民に占める女性の比率が急増した戦間期のアメリカ合衆国のように、限定的な局面ながら女性が多数を占めるという状況も存在しました。こうした状況を踏まえると、従来の近代ヨーロッパにおける空間的移動に関する歴史研究では、女性の空間的移動に対する関心が著しく低いかったと言わざるを得ません。4年間にわたる共同研究では、この空隙を少しでも埋める努力をしたいと思います。
このホームページでは、研究の進捗状況やこのテーマに関するさまざまな情報をお伝えしたいと思います。移民史や女性史、ジェンダー史に関心を持つ多くの方にご覧いただければ幸いです。